加治丘陵の保全

加治丘陵は、秩父、奥多摩の山々に繋がる自然豊かな丘陵です。

この自然環境や生態系を残すことは将来への財産となりますが、都市近郊という立地からも、

地権者の方々にとっては土地資産なので、一概に開発を拒めない事情もあります。

保全か開発か、管理や活用の仕方など、常に複雑な課題を抱えている加治丘陵です。

歴 史

昭和40年代、国の法律に基づき、加治丘陵は「近郊緑地保全区域」が指定され、緩い保全の網が掛けられました。

その後ゴルフ場による巨大開発の話が持ち上がり、加治丘陵最大の危機を迎えました。この時は、当時の協会支部会員や市会議員が中心となって、「鳥獣保護区」(この区域ではゴルフ場開発が認められない)の指定を働きかけて成功に導き、これをきっかけに本格的に全域保全の方向に向かいます。


*サイクリングコースは1970年頃(?)整備されていますが、詳細は不明です。


1988年には、入間市長が加治丘陵の全域保全の方針を表明。それを具体化する保全計画策定のため、当時の(財)埼玉県生態系保護協会本部が入間市から依頼を受けて、支部会員や関係団体、学識者等も参加した加治丘陵全体の自然環境調査が行われました。

 

その後、入間市加治丘陵保全等検討委員会や入間市加治丘陵さとやま計画「自然体験区域」ワークショップなど、計画立案会議に支部メンバーが委員として参加してきました。


入間支部の活動としても、観察会や里山まつりなどを企画。入間市から保全管理地域の土地を借りて、保全作業を行う団体「ヤマガラくらぶ」を立ち上げ(1999年12月)、現在も支部メンバーがリーダーを務め、活動を継続しています。


2002年、加治丘陵西端部の墓地拡張計画を食い止めるため、埼玉県の「緑のトラスト6号地(唐沢流域樹林地)」の公有地化がされました。


*入間市の「加治丘陵の保全、活用基本計画」の概要はこちら

http://www.city.iruma.saitama.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/775/satoyamakeikakudaijesuto.pdf

2003年(平成15年度)から「加治丘陵さとやま巡視員制度」が創設されました。市民公募で選ばれた10人の巡視員が、二人一組で3時間週5回程度、東、中、西の3コースを分担して巡回します。仕事内容は①ゴミ拾い②散策路の状況や危険箇所の報告③野生生物の目撃報告④利用者状況の報告です。

入間支部の会員の中でも応募された方がおり、一年間勤められました。1年が終わり希望があれば、10人のグループで市有地の管理を許可され、任されるそうです。

みどりの課は2016年になくなりましたが、巡視員の公募は都市計画課により現在も行われています。

2008年(平成20年7月)に「(仮称)加治丘陵さとやま自然公園見直し計画」が策定されました。

その中の「花見の丘」計画については、従来の桜だけの植栽ではなく、季節ごとに花や紅葉が楽しめる樹木を、加治丘陵自生樹種から選定することになり、整備計画を検討中です。

失われていく希少種たち

2010年頃から、入間市は「加治丘陵の保全、活用基本計画」に従い、加治丘陵で植生調査、並びに管理作業を開始します。


植生調査には入間支部の会員が複数協力をしています。現在まで、調査は月に1~4回、険しい斜面の多い環境で、細かく種類や数、分布地域を記録するハードな作業です。(希少種については特に細かく報告する義務があるそうです。)

この植生調査を通じて、レッドデータブックに掲載された絶滅に瀕する、貴重な植物が加治丘陵にはたくさん存在していることがわかってきました。

植生調査が終わると市は、その区域の管理作業(下草刈り、間伐)を登録ボランティア団体に依頼します。

しかし、あらかじめ決められた計画に沿った管理作業ということでしょうか、その後現地に行ってみると、報告した「貴重な植物」が刈り取られている、ということが続きます。

調査委員は「保護すべき策を」と何度も申し出をしているにもかかわらず、【調査→伐採、刈り取り】の画一的作業が繰り返されました。

小さな保全活動

↑ 手をつけないよう、わかりやすく柵作りやロープ張りをする。


→ 刈り残してもらったリンドウが見事な花を咲かせました。しかし周囲の環境を守れなかったため、次の年は(乾燥のためか)消えてしまいました。

↓希少な植物を囲っても、樹木や茂みの伐採で大きく環境は変わってしまいます。

管理作業により環境が変わってしまうので、希少種の植物に限らず、次の年にはなくなってしまった、稀に、作業の方々が「きれいだから」と残した花も、周囲の環境が激変しているため、次の年は消えてしまった、ということが頻繁に起こり、観察会でも「かつて存在した植物」の話をすることが多くなりました。調査に加わる会員からも「空しい作業だ」という不満の声が大きくなりました。


管理ボランティアの方々の中でも、刈りすぎに疑問を感じ、問い合わせをしてくる方があり、それがきっかけで情報交換をすることが始まりました。(2015年頃)


加治丘陵の特性や希少種と環境の説明をする合同観察会、草刈り作業前に保護したい部分(植物の群落)の柵作りなど、わずかではありますが活動を一緒に進めています。


本来、植生調査に基づき管理作業の方針を入間市が指導する立場なのですが、それをできない人間関係があるようで、私達の保全活動は公にできない活動となっています。

事前植生調査の意味

入間市は時間を掛けて、加治丘陵の里山計画を進め、管理計画も作成してきました。その計画に従って作業を進めるのは当然のことなのですが、作業前に行われる植生調査は「何のため」に行っているのでしょうか?


今までの加治丘陵は、スギヒノキが植えられ、手入れがされなくなった暗い林やじめっとした湿地があり、良好な里山環境といえない場所が少なくありません。そのような環境から、新たに希少種が、あるいは以前からあったけれど時代の流れで今では貴重な存在となっているという植物が見つかっています。


里山はもともと人間が管理し造ってきた自然で『こうでなければ』という定義や正解はありません。里山計画を優先するのか?種の多様性を考慮していくのか?新たな検討も必要なのではないでしょうか?


皆さんはどう思われるでしょうか?