大森調節池 ビオトープ物語

大森調節池のビオトープは私達の活動により、入間市内で唯一、人の手で自然が豊かになった場所です。


狭山丘陵と加治丘陵の「緑の回廊」の一部として貴重な場所になるのではないかとビオトープ化を考え、要望を出したのは、今から20年以上前です。


入間市緑の基本計画の中でも「貴重な水辺」と認識され、埼玉県でも貯水機能と豊かな環境を両立した斬新なケースと注目されました。



大森調節池は、1988年頃から、不老川の洪水対策用の池として、入間市宮寺に掘られました。

計画ではとても広い面積(32ha)なのですが、土地買収がなかなか進まず、現在は暫暫定の計画(総面積6.43ha、うち池3.8ha)となっています。

このあたりの地下水位が高いため、1m程掘ると水が出てきます。洪水時以外はグランドとして利用するはずでしたが、矢板を打って地下水を止めるのはその影響が予測できず、整備するにはコストがかかりすぎるということで小康状態となっていました。

しかし悪いことばかりではありませんでした。この地域は「鍬が入らない」ほど水分の多いじめじめしていた土地だったのですが、池によって、水はけの良い、お茶や畑に適した土地となりました。

敷地内には草も茂り、きれいな湧水が湧く水辺もあることから、生きものたちがだんだん集まって来るようになりました。初めて見るサギに「ツルが来た!」と言った人もいたそうです。

治水機能と生きものたちの空間を!

私達はこの池を、洪水時以外は生きものたちの場所(ビオトープ)となるような工事や整備をして欲しいということを、1993年から県に要望をしてきました。

当初県は受け入れられない姿勢をとっていましたが、入間市長はじめ議会でも「自然のままに」という意見が出だし、また環境の視点が加わった「河川法の改正」もあって、ついに1997年、トンボの産卵場所作りのための池の中のガマ刈りが許可され、1998年には植樹のための2000㎡の占有許可(現在は手続き上の理由で所有者は入間市)が出されました。

治水機能については問題を抱えた調節池ですが、湧水がある以上、池の面積を確保するしかありません。

また不老川の洪水は、大森より下流の急速な開発(住宅や道路開発、狭山台工業団地からの水)が原因であることも否めず、地域ごとに治水対策をする総合治水の考えも提案してきました。

(下藤沢「珈琲館」下流に小規模な自然型遊水池を造ることを「不老川流域川づくり市民の会」とともに提案もしている)

たくさんの生きもののために

*植樹

大森調節池の林は、地域の林を調査した結果、同じ植生で植樹されています。林で拾ったどんぐりから苗を育てたり、開発される林から移植してきた苗もあります。小さな苗たちを守るため、毎年背よりも高く成長するカヤやススキ刈りをしました。

(写真は植樹風景と10年後の同じ場所)


公園や市内で見かける林は、樹木と地面だけといった印象ですが、大森の林は高木中木低木と下草が茂っています。林の中はたくさんの植物が、光や栄養を分け合って生きていているのです。「この植物しか食べない」という偏食の昆虫たちの胃袋をこの林は満たしてくれます。

若い木も古い木もそれぞれ利用する生きものがいるので、現在は間伐しながら萌芽更新させ、若い木も育てています。


*ハンノキの林

埼玉県の「ミドリシジミの森づくり」1998年度事業で、予定していた場所に植えられなくなり、急遽池の南東部分に400本のハンノキを植えることになり、私達も手伝いました。管理は入間市が行っています。

*池の草刈り

きれいな湧水がわく池と林があるこの環境には、たくさんのトンボ(32種が観察)が集まってきました。林の中で過ごすトンボがいることを初めて知る人も少なくありませんでした。多様な環境をつくればたくさんの生きものがやってくる可能性があるのです。

トンボの中には開水面がないと産卵できないものがいます。また、水鳥にとっても必要な環境ですので、池の中の生い茂るガマやフトイなどの草刈りも行いました。夏の暑い時期でしたが、水の中は涼しく、トンボがいるので蚊にも悩まされませんでした。

(写真はバンの卵とアオモンイトトンボ)


*フナ、メダカの救出、池堀り

当時「不老川には魚がいない」と言われていたのですが、1997年、初めてメダカらし魚を見て一同大喜び。その後魚群も見ることがあり、調査でフナなど6種を確認しました。(最近貴重なジュズカケハゼも見つかっています。→生きもの情報)

1999年の冬に池が干上った時にはフナやメダカの救出を行いました。全部は助けられなかったのですが、なんと1000匹以上の魚を学校や個人のお宅へ避難させました。渇水期をしのぐため、池の掘り下げ(水のたまり場)なども行いました。(後に治水の面からも必要と、県により一部の掘り下げが行われ、池が涸れることはなくなりました。)

*カエルの救出

池に産卵にやって来るカエルたちが周囲の道路で車に轢かれるのを防ぐため、1999年からカエル救出が始まりました。多い時には1200匹以上のカエルを救出。冬の雨の夜の危ない作業でした。入間市にはカエルトンネルも作って頂き話題になりました。

カエルたちはふだん林や畑で暮らしているため、早く植樹した苗が育ち、こちらの林で活してくれるといいなあ、と全員が願いました。

(写真は 池の敷地に放すところと救出した産卵間近のニホンアカガエル)


*ウシガエル退治

ウシガエルは外来種です。その土地固有のカエルを絶滅させてしまったり、水鳥のヒナを食べたり、生態系に悪影響を与えると海外でも問題になっています。大森の池でもアカガエルたちやカイツブリやバンのヒナが心配です。

池が干上がる冬にウシガエルのオタマジャクシの退治を行います。水が涸れてもガマなどの根元に潜り込み生きのびていて、そのしたたかさに驚かされました。退治したオタマジャクシはサギたちも食べませんでした。

みんなの力で

*調査

調節池敷地内では669種にのぼる生きものが観察されています。しかもミズニラ、ミクリ、カワヂシャ、オオルリボシヤンマ、マルタンヤンマ、ババアメンボなど10種にも及ぶ絶滅危惧種や希少種が観察されました。

また調査により、ここ独自の生態や習性を持つトンボも見つかっています。

植物、鳥類、昆虫、魚類などの生態調査には専門家の方々が「大森の池ファンクラブ」として関わってくださり、それらの調査報告や池や治水にまつわる歴史などをまとめた報告書を作りました。(写真 大森の池の生い立ちや10年間の観察記録などをまとめた情報誌『-ガイドブック- 大森調節池の生き物たち』2001年1月発行 / 60ページ / 1000円)


*大森の池まつり開催

子供達に自然体験をしてもらいたいと2000年夏「大森の池まつり」を開催しました(現在は池まつり実行委員会主催)。ザリガニ釣り、トンボ釣り、バッタ採り、カヌー体験、水質調査やネイチャーゲームなど、また緑のつながりを見てもらうため気球やはしご車の出動もあり、多くの方のご協力をいただきました。


数々の作業や調査、池まつりは「埼玉県生態系保護協会本部」「水と緑のネットワーク」「大森の池ファンクラブ」「不老川流域川づくり市民の会」[ヤマガラくらぶ」、地域の皆さん、行政の方など大勢の方のご理解ご協力により行うことができました。

つながる緑

自然はなるべく大きな塊が良い、またそれぞれをつなげていくのが自然を豊かにしていく原則です。孤立した小さな自然ではやがて滅びてしまいます。

狭山丘陵と加治丘陵を結ぶ「緑の回廊」の一部として育ってほしかった大森調節池の自然。ホンドカヤネズミ(希少種)やタヌキ、イタチは、もしかしたら狭山丘陵からの「緑の回廊」を伝って来たのかもしれません。それは林だったり、畑だったり、U字溝になっていない小川だったり、生け垣のある庭だったり、ちょっとした植え込みだったり、ちっちゃな草がはえてる空き地だったり…

秩父連山までつながりを持つ魅力的な加治丘陵へと続く「緑の回廊」づくりは、未来の子供達へ豊かな自然を手渡さなければならない私達の責務ではないでしょうか?

(写真はタヌキの親子)

          

 ↓ 緑の回廊、あなたはどこに造りたい?

大森の森 その後

植樹から20年ほど経ち、林もりっぱに育ちました。

新緑の春は、敷地内の植物や池の水生生物の観察会&摘み取った野草の天ぷらで楽しみます。

初夏から夏にかけては、草刈り、ツタはらいを行います。

大きく育った木々の下、作業の後は冷たいスイカを頂きます。明るい木陰がありがたい!風でも吹けば最高のロケーションです。

冬は間伐作業。最近は、セミプロの方に手伝ってもらわないと伐り倒すことが出来ないほど大きな木を倒します。

作業の後は美味しい豚汁が待っています。

他の林と違うところはどこでしょうか?

住宅地の近くの公園や林、街路樹などと大きく違うところは、枝振りがとっても自然なこと。

いつの頃からか、街中の木は、電信柱のように伐られたり、出たばかりの新芽さえ枝打ちされてしまいます。

大森の林は、広いところではのびのびと、まわりに他の木があれば、そのすき間を狙うように競争しながら育っています。


そしてまた、最も大きく違うところは、

大きな木、中くらいの木、低い木、いろんな草など、たくさんの姿をした植物が茂っているところ。

多くの林や公園は、木が立派でも、あとは地面だけ。

林の中にはたくさんの種類の植物がいて、それぞれの植物に頼っている昆虫や鳥がいて、たくさんの生き物の気配がします。

治水と自然の調和はあるのか?

2016年台風9号で、不老川流域は大変な被害を受けました。

国から多額の予算がつき、治水対策として、上流では、4橋の拡張工事と、大森調節池の貯水量をあと5万トン増やすための拡張工事が計画されています。

調節池の敷地内、県の事業であったミドリシジミの森と、帯状にあるわずかな大森の林も潰して池は拡張されるのでしょうか?

開発が進むと、その地域での雨水の浸透力が激減します。大規模開発の場合は、その地域で受け止められなくなった水量分を「調整池」に貯めることになっています。しかし小規模な開発(住宅、道路など)にはそうした規制がなく、すべて川に流れるがままになっています。

上流のどこかで大量の水を蓄えても、その下流から大量の雨水が流れ込めば洪水は起きてしまうのです。

治水問題は地域全体で総合的に考えられていかなければならない問題ではないでしょうか?